製造業で注目されているスマート工場について解説!

デジタル化

こんにちは!製造業ライターの堀内孝浩です。

どの業界でもDX(デジタル・トランスフォーメーション)という言葉を耳にしますね。

IoTやAI、ビッグデータなどのDXが注目されている今、製造業を取り巻く環境も目覚ましく変化しています。製造業の未来形としては「スマート工場」が期待されており、日本のみならず世界中で実現に向けた取り組みが始まっています。

今回の記事は、そのスマート工場についての紹介です。

 スマート工場とは

先進的な取り組みとして注目を集めている「スマート工場」。スマート工場(考える工場)とは、工作機械や生産ラインをネットワークで接続し、監視やデータ分析を通して工場全体の生産体制を最適化することを指します。

すでに導入が進んでいるIoT

スマート工場の構成要素はビッグデータ解析やAI、IoTという技術で、中でも導入が進んでいるものがIoTでしょう。

IoT(Internet of Things:モノのインターネット)のしくみは、工作機械にセンサーなどのデバイスを取り付け、得られたデータをネットワークを介して収集。そのデータをサーバやクラウドに蓄積して、監視やデータの解析をするというものです。

IoTの目的は生産ラインや製造工程の「見える化」です。稼働状況をリアルタイムにチェックすることで、従業員や管理者にとってどのライン・機械がボトルネックになっているかを一目で把握できます。

スマート工場は工場の理想形

IoTだけでなくAIもスマート工場には欠かせません。その理由の一つに「ダイナミックセル生産」の実現が挙げられます。

製造業において大量生産を支えてきたのは「ライン生産」と呼ばれる方式です。ライン生産のメリットはベルトコンベアによる流れ作業だけで製品が作れるため、生産効率が良く、従業員に特別な訓練がいりません。しかし、一つのラインにつき一品種が基本であり、多品種少量生産に適していません。

一方「セル生産」は、各工程が独立しているため多品種少量生産に適しています。少人数のチームで製品を一から作り上げるため作業員の技能向上を図ることもできます。

ダイナミックセル生産とは、ライン生産とセル生産の長所を合わせた生産方式のことです。従来の生産ラインにIoTとAIを導入すれば、流れ作業の中で随時アレンジを加えることが可能となり、大量生産にも多品種少量生産にも適応できるのです。

スマート工場ではインターネットにつながった機械と機械が互いに情報を交換することで、自律的に考え最適な生産体制を維持するのが特徴でしょう。

 世界で進むスマート工場化

日本だけでなく、スマート工場化の波は世界中で起きています。以下では特に力を入れているドイツと中国の取り組みについて紹介します。

インダストリー4.0

インダストリー4.0とはドイツ政府が推し進めるプロジェクトであり、IoTやAI、産業用ロボットを有効活用することで産業界の改革を促そうという概念です。その中心的なコンセプトとして位置付けているのがスマート工場になります。

スマート工場による成果にダイナミックセル生産を取り上げましたが、インダストリー4.0ではさらに推進した「マスカスタマイゼーション」と呼ばれるモデルを目指しています。コストをかけない大量生産を土台にして、一つずつ製品をカスタマイズできるため、ドイツ企業のモノづくりの幅は広がり、製造業の生産性向上につながるわけです。

中国製造2025

中国の製造業でも次世代の産業革命に乗り遅れることのないよう、「中国製造2025」という戦略を中国政府が計画しています。

その戦略は2025年までに製造強国の仲間入りを果たすことです。目標を達成するために「製造業イノベーションセンター設立」「スマート製造」「工業基礎力強化」「グリーン製造」「ハイエンド設備イノベーション」という5大プロジェクトを掲げました。

プロジェクトの核となるのはスマート製造=スマート工場です。中国政府は多額の資金を投資して、モデルケースとなる企業を選抜しています。モデルケースの結果により生産効率やエネルギー効率は上がり、運営コストや製品不良率は削減を達成しています。

 スマート工場のメリットは?

スマート工場のメリットは生産の最適化だけにとどまらず、設備や人材育成にまで目を配ることができます。

IoTで故障の予知

工場で使用する工作機械は高負荷であるため、適切な保守管理が欠かせません。スマート工場ではIoTにより機械の振動、異音、温度異常などのトラブルをセンサーが検知し、データとしてインプットします。その上で近い将来のトラブル発生の可能性を評価し、予兆を検知すれば監視センターへ警戒情報を伝達できるわけです。

さらに、従来は故障が発生した際に保守要員を呼び出すのも、呼び出された保守要員が原因を把握するのにも時間を要していました。しかし、これをネット化することで呼び出しは素早くなり、遠隔診断によって故障個所の特定・修理までの時間を大幅に短縮することも可能です。

AIによる不良品の探知

AIによる画像認識技術は不良品の探知に応用することができます。製造業において出来上がった製品を検査する工程は欠かせませんが、人の目に頼るケースが多いため見逃しの可能性や検査基準が人によって違うなどの問題がありました。さらに検査工程は労働集約型で、多くの人員を投入する必要があり生産性の低下にもつながります。

AIの深層学習(ディープラーニング)では、大量のサンプル画像や動画を読み込むことで、異常検知のアルゴリズムが出来上がります。例えば良品データだけを読み込ませて、それ以外を不良品として検知するように開発すれば、良品・不良品の判別を自動化できるわけです。

ただ、画像認識技術は発展途上にあり、検査要員を完全に無くすことはできません。人を支援するための初期導入として考えておくとよいでしょう。

VR・ARによる遠隔支援での人材育成

人手不足が叫ばれる昨今、人材育成は喫緊の課題と言えます。製造業向けのVR・ARソリューションでは、VR(バーチャルリアリティ)技術とモーションセンサーを使用することで仮想空間に現場を再現して研修を行えます。体験を通していち早く作業に慣れるうえ、熟練者の目線や動きを追体験することが可能です。

遠隔地にいる新人を支援するツールもあります。AR(拡張現実)技術は現場の作業者と遠隔地にいる教育者が映像と音声を共有します。熟練者がわざわざ現場に赴かなくてもサポートでき、作業の正確性を上げるのはもちろんのこと、人材育成を効率よく行うのに適したソリューションです。

 中小企業のスマート工場への取り組み

ここまでスマート工場の中身やメリットについて解説しました。しかし、導入には大きな投資が必要となるため、資金力の弱い中小企業にとってスマート工場を実現することは難しいのが実情です。

ただ、小さな一歩から着実に工場をデジタル化させることは可能です。低予算で取り組めるスマート工場の一例として、IoTを取り入れた業務効率化を紹介します。

稼働状況の見える化

一つ一つの工程を効率化しようと考えた際、まず必要となるのが設備の稼働状況を把握することです。

例えば、機械の運転状況を示すランプに光センサーを取り付け、停止している時間を検知できるようにします。その時間から稼働率を正確に算出してモニターに表示すれば、リアルタイムでどの工程がボトルネックになっているかが可視化できるわけです。

改善すべき工程が見つかれば、作業手順にムダがないかを見直すことで効率化を図れます。センサーや部品は汎用品でも済むため、低価格でシステムを構築できる点が導入のハードルが低い理由です。

 まとめ

スマート工場は先進的な技術である、IoTやAIを活用して生産性向上や業務の効率化を図ることが目的です。導入には知識を持った人員やさまざまなステップを踏む必要がありますが、小さな投資から一歩ずつ進めていくのが大事です。

技術は進化しているため、これからもスマート工場を取り巻く環境には注視したいところです。

執筆者
製造業ライター

ライターとして活動しております。主な執筆ジャンルは、製造業の生産管理、工程管理、プラスチック成形など。校正経験もあります。

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